艶想 第1號
プロ官能作家集団「与」
書籍紹介
プロの作家が「自分の書きたいものを好きなように書く」というコンセプトで書き下ろした、官能小説アンソロジー
愛と欲望と蹂躙の物語!深みのある物語に思わず引き込まれる上質な官能短編集!
9作品のほか、人気作家たちの創作についてのこだわりやコツのアンケート付き
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【目次】
1/野々原いちご「美しい春」
<代り映えのしない毎日を生きる美月の願いは人生を終わらせること
SNSで知り合った人物に殺害を依頼するが、それは予想外の感情を呼びおこす>
2/乃村寧音「わたしのリビドー先生」
<二十一歳の大学生、美緒はS女
そんな美緒にはS女として目覚めたきっかけになった思い出があって……>
3/音梨はるか「雪女の森」
<猛吹雪で遭難しかけた大学生スキーヤーを助けたのは
「雪女の森」と呼ばれる森に住む、美しい女性だった>
4/深志美由紀「私は部下の輪姦奴隷」
<チカは部長の高木と社内不倫をしていた
しかし、部下の佐々木にSMハメ撮り写真を見られ、彼の言いなりになることに>
5/佳那伊織「サムシングブルー」
<三年交際した未亡人は別人と再婚を決めた
男は式場で幸せに浸る花嫁に究極のエクスタシーを与える>
6/津村しおり「夏の雨」
<夏。地元に帰省した美琴と、地元から出ない裕也
三角屋根の小屋で、二人は行き場のない思いをぶつけあう>
7/香坂燈也「姉弟を喰らう」
<若妻とその弟による禁断の行為を目撃した男は、姉弟を拘束して責める
最後に選んだのは義弟の禁穴だった>
8/佐伯香也子「お嬢様の恋」
<南宋の頃、金持ちの呉家の娘が、茶店の美男に恋煩いをした挙句に死んだ
しかし、その強い想いは数奇な運命を引き寄せる>
9/古川裕子「長期刑」
<『奇譚クラブ』1953年9月号に掲載の
亡き夫との間で交わされた濃密な被虐性愛の記録>
昨今の官能小説市場は漸次縮小傾向にある。特に紙媒体の減少は深刻だ。そのあおりを受け、昨年は私の二作品がお蔵入りとなった。
「しばらく官能作家はお休み」とブログに書いたところ、いろいろな方から励ましをいただき、似たような状況の官能作家・音梨はるかさんからは、「陽の目を見なくても書くことだけは続けたい」という熱いメッセージをもらった。
その励ましや情熱に感激し、以前チラッと考えたことを思い出した。
それは、プロの官能作家が何人か集まって電子の雑誌を作り、出版社の意向によらない自分が本当に書きたい官能小説を書いていったらどうか、というものだった。
さっそく音梨さんに伝えたところ、
「ぜひ参加させてほしい! そんなことを考えつくなんて、さすが佐伯さん!」
と持ちあげられてしまった。
これもお世話になった官能界への恩返しと思い、新しい雑誌の概要を作って知りあいの官能作家さんへ声をかけ、プロ官能作家集団「与(あたう)」を立ちあげた。
「与」は、自分の才能を使って世の中に楽しみを提供する者達という意味と、仲間になるという意味の「与(くみ)する」でもある。現在、七名の錚々たるメンバーが所属している。
そして、このグループで季刊誌、新官能文芸『艶想(えんそう)』を出していくことにした。「艶想」は、艶めく想いを意味する私の造語だ。創刊号では、執筆者のほとんどが創作に関するアンケートに答えてくれている。これから官能小説を書いてみたいとお考えの読者にも、参考になる部分があるかと思う。
(中略)
かつて、官能小説が一般文芸のバイオレンスやサスペンス、あるいは推理小説などから分離し、独立したジャンルとなった一九六○年代には、芥川賞や直木賞の作家などが官能小説を執筆していた。今よりもずっと文学性があり、六五年たって読んでも、筋立てや表現のレベルが高くてエロい。時代を超えて通用する真理があるのだ。
とある書店では、岩波新書の隣に官能小説の棚があったという。六○年代、七○年代のちょっと理屈っぽい若い男性たちにとって、官能小説を読むことはカッコイイことだったのだ。
自戒を込めて言えば、今の官能小説に質の高い物語性と文学性を取り戻し、荒々しい衝動の中から浮かびあがる人間の性の本質を描きだしたい。
ごく普通の小説好きな方々に、
「官能ってこんなに面白いの!」
と感嘆してもらいたい。
ずっと官能小説を読んできた方々には、
「これも官能なのか!」
と驚いて欲しい。
そのような願いを込めた『艶想』が、「与」のメンバーや参加表明してくださったゲスト執筆者とともに、いよいよ船出することになった。
みなさまの身も心も潤す新鮮な雑誌になれば幸いである。
(『艶想』創刊に寄せて より)















